擁壁のある敷地での計画

擁壁のある敷地での計画

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 最近、問い合わせが増えている、擁壁のある敷地での計画について纏めてみたい。擁壁がある敷地は、安値で売られているケースが多いが、その時に注意しなければならない項目や、結局は平坦で一般の価格で売られている敷地を購入した方が、トータル的に安かったという事にもなりかねないので、購入前には設計をお願いする建築家に確認して貰う事は必ず行う必要がある。

大きなデメリットとして捉えがちな、擁壁のある敷地での計画であるが、メッリトに変わる事は大いにある。予算的なことに加えて、売り敷地の数が少ない地域での需要に答える物件になる事も多い。まず、なぜ敷地が安く売買されているのかと言うと、擁壁のある敷地は、これからここで新居を構える為の造成の費用を売主が整備しない代わりに、その分安く販売する事で、周辺の敷地販売価格との整合性を持たせている。その相手側が想定した造成費用よりも安い金額で、工事を行う事が出来れば、その分トータル的に金額が安くなる結果となる。またゼロから新築を計画する事もあって、上屋側の設計でその造成を無にしたり、兼ね備えたりする事で、上手い解決方法のアイディアさえあれば、大幅にコストダウンの流れになる。

擁壁のある敷地 解決策

過去の事例を紹介すると、愛知県名古屋市桜本町で敷地奥側に相手側が3m程高い擁壁のある敷地を安い価格で発見したクライアントが、この敷地を購入して新居を建てたいとの依頼を受けた、その場所で計画を進める為には、敷地にかかる崖条例をクリアしないと、建設は出来ない為、条例の解決策とローコストに住宅を計画するアイディアを求められた。

一般的な解決策としては、既存擁壁に対して待ち受け擁壁を築造して、既存擁壁が崩壊した場合でも、その待ち受け擁壁が災害から守る役割を担う方法が一般的で、敷地購入時に不動産業者からも、その説明があったようだが、その擁壁を築造する工事金額は数百万との事で、それをしてしまうと計画が纏まらない。

擁壁 敷地

そこで考えた案が、コンパクトな住宅面積の要望だった事と、敷地が大きかった事もあって、建物を配置する位置に自由度があった、その事から限りなく既存擁壁から新築する建物を遠ざけて、既存擁壁が万が一崩壊した時でも土砂が建物にかからない位置に設定した、その角度はその地域の条例ごとに定められている為、名古屋市が定めている角度と、配置の距離を測ると少し建物に干渉する事となったが、その部分をコンクリートで作る事で、崩壊時の勢いを止める計画とした。その外部衝撃加重も各行政で定められているので、計算を行い安全である事を担保しこの計画を進めた。殆どの住宅には、コンクリートの基礎が必要な為、その基礎を利用して上記の擁壁を兼ねた基礎を作るので、それ程の工事予算にはならない、一石二鳥の方法だったと言える。

造成 高台 敷地

また別の事例として、前面道路に面して旧擁壁があり、当該敷地が高くなっている、プロジェクトである。この物件はクライアントから土地探し前の段階で設計の依頼を受けていた事から、沢山の敷地をクライアントと一緒に見学をして、メリットとデメリットを話し合いながら、この敷地で出来る事と出来ない事がクライアントにとって、必要なのか必要でないのか、一つずつ条件を整理して進めたプロジェクトであった。前もってクライアントの要望を把握している為、建築家の目線でこの敷地であれば、こんな暮らし方が可能だと、より具体的に話していけるので、よりクライアントにフィットする計画が出来たプロジェクトである。その他に金銭的にも、大きなメリットを与えられた。大抵の場合の市場価値は、需要と供給で決まるので、世間一般的な人が好みそうな土地は高い価格が付くのだが、人気のない土地をメリットに変える設計をする事で、激安で敷地を購入する方法は、プロジェクトによっては必要になる事もある。

敷地 擁壁撤去

全ての安い敷地に対して、デメリットをメリットに変える事が可能とは言えないが、そこに住むクライアントの要望によっては、都合よく納まる可能性はある。

竣工時にこんな素晴らしくなると思っていなかったと喜んで驚かれる事も沢山あるのは、建築家と一般の人では、見えている部分が少し違うのかもしれない。そのギャップを埋める為に、常日頃から説明には力を注いでいるが、ある程度の関係性や権威がないと骨を折る事も多い。しかしコミュニケーションはどの物件でも必要となるのは当然な事の為、説明するに尽きるのである。

そのような事はリノベーションのプロジェクトで良く起こる。リノベーション前は、ほったらかしで全く使っていない場所で、ただ同然の価格で譲り受けた場所が、価値を持ち誰もが欲しがる場所へと変わった時の他者の顔色はその事は強く痛感する。家づくりはクライアントと建築家が議論しながら方向性を決めていく事が大切だと言える。 困った時は一度、建築家に相談してみる事は一つの方法だと思う。相談費用は相談前に事前に確認しておけば、無料で行ってくれる場合や、この作業をしたら費用が発生するなどの、価格の提示を受ける事で安心して相談ができる。

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