
京都市の耐震改修を兼ねたリノベーションの需要は多いものの、クライアント側が信頼できる施工者と設計者の選択が難しいとの声を良く聞く。もちろん施工者や設計者は、信頼ができ技術力の高い会社にお願いした方が良いとは理解しているものの、どの業者が信頼できて、技術力があるのかを比べようとしても、建築に関係のない一般の人であれば精査は難しい。
今の時代、広告などで世の中に露出をしていれば、安心するクライアントもいる。知人などの口コミを信頼するクライアントもいる。
そのどれもが自分自身でその会社を調べたのではなく、本質とは関係のない間接的な精査で、善し悪しを判断している事になる。

それもそのはずで、現代人は時間がない。週に5日働き、残りの少し時間で家事や余暇や休息にあてる。
そんな生活の中で本やネットを読みあさり、一から建築の勉強をしなければいけない事は酷である。その流れがあり、施工者や設計者を選定する時に間接的な判断基準で、一大決心を行わないといけない。
そのような状況のクライアントである為、設計を始める時には設計者がフォローしながら、クライアントには自分の家を一緒に考えもらい、少しずつであるが共に知識を共有する事が必要で、設計を体感して貰う事がクライアントにとって有益な経験となり、竣工後の満足度は高くなると感じている。

昔の学校のように、宿題や予習・復習をする事はしないが、どのクライアントも一年以上もの間、私と設計を共に行う事で建築が好きになってくださる事も、一つの喜びでもある。
建築が好きになると、建物を大切にしながら長く暮らして頂けるので、どの面を考えても必要なプロセスなのである。 ただ設計する側としては少し苦労がかかる作業であるが、今の時代には必要な事だと信じて続けていきたいと思う。