
都市から住宅の暮らしが地続きに繫がる京都の町並みを、設計者としてだけの考えだけで形づくる事は出来ないように感じられる。それは歴史の重みからくる、住民のリテラシーの高さからなのかもしれない。
昨今、京都は観光業が潤い、それに関係する建物の建設ラッシュで、建物の新陳代謝が行われている真只中である。老朽化した町並みを手直しする事は、滅多に無いチャンスでもある。しかし、経済的な視点のみで闇雲に手直しを続けると、全てが新しい都市となってしまいかねない。
秘伝のタレは、少しずつ付け足しする事に意味があるはずである。


私が京都でリノベーションの設計を行うにあたり、歴史や風習、習慣を汲み取り、新たな価値を創出して引き継ぐ事が、今の京都には必要なのだと考えている。住居に関しても、以前にから住まわれて来た、住まい者の痕跡をたどり、その暮らしから出来た住居内のパーツや空間を使い、今後の住まいとして必要とされる内容に改良していき。その空間によっては、その建物の竣工当初に戻す部分や、前住居者が付け加えた、材料を壁面に使用するなど、歴史が幾つもの層となり、時代をぶつ切りとしない歴史の流れを演出する。どこが新築で、どこが以前の物かなども、かき混ぜる必要がある。

従来の設計では、現時点を切り取り、全てを新しく構築する事で、価値を創出する方法であるが、それでは時間を繋げる事が不可能である。 過去の住まい者の痕跡を探り、歴史を辿る設計は過去から未来へと繋ぐ役割を果たし、また未来に向けて道を開く。歴史の連続性を維持する、京都ならではの改修が必要なのだと、私は考えている。