
京都の東山区には多くの路地があり、今回は120年続く路地の長屋調査を行った、10住戸が連なる長屋の住戸に入ると、竣工した当初は同じ間取りであったであろう住戸が、そこに住んだ生活者の特徴を転写したかのような住まいとなっている。古くから京都に縁のある職人の住まいとなっていたこの長屋は、住戸が脈々と形を更新し現代の姿となっている。その職人が長けた分野が生活者の痕跡として住戸に残る。
バブル崩壊後に建てられた、一般的な住宅の寿命は30年だと言われる中、昨今は長い年数でも住み続ける事を掲げた、住宅制度などが行政の啓蒙と共に目にする。人口増加などによる、急激な住宅供給を求められた時期から、少しずつ質への移行に舵を切った流れも理解できる。
また、京都には前述したように築年数が長い住戸が沢山存在する、その住戸をリノベーションなどで、観光客の宿泊施設としたコンバージョンも数多く増えてきている現状である。
私としては、京都が新旧混ざり合った、都市になる事は賛成であるし、そうしなければ多様な都市は創ることは出来ない、それだけでは多様性は生まれないにしても、寛容な姿勢は必要である。
これからは、 その長く住み続ける事で出来た生活者の痕跡が、どのように暮らしに反映され、現時点の生活者をどのように豊かにするかを考えてみたい。